工場取材:スーツの設計図

 急に暖かくなり春爛漫といった季節になりましたが、読者の皆さんはお元気でしょうか?
花粉症の方には辛い季節かも知れませんね、、、

こんな冬から春への衣替えの時期はファッション業界は繁忙期で慌ただしくなりますが、今月は忙しくなる前の2月に取材した縫製工場のことをHPでご紹介したいと思います。

さて、今月の話題ですが、、、
読者の皆さんはオーダースーツがどんな風に縫われているかご存知でしょうか?

近代化された設備で整然と...でしょうか?それとも。。。

なかなか消費者の方が知る機会はないと思いまして今回はこの辺をご紹介いたしたいと思います。

ご紹介するのはビッグヴィジョンの主力である青森工場
ここでは1日約200着ものオーダースーツを個別にデータ処理をし、裁断し、1着1着個別に縫っている大変な工場です。

その中から今回はご注文から実際縫うまでの初期段階をご紹介いたします。
(評判が良ければ、Part2、Part3で縫う現場もご紹介します。)

どのような流れかと言いますとこんな感じです。

縫製の流れ

1.受注

>>> 注文はビッグヴィジョンの場合、画像のような採寸表に記載され生地と受注票がセットになって縫製工場へ送られてきます。
受注票に記載される縫製指示にはデザイン情報採寸データ体型補正情報の3つが書かれています。


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2.生地の確認

>>> 工場に送られてきた生地は縫製作業に入る前に、地のしといって適度な湿度と熱を加え、生地のゆがみをなくし、また傷等がないか入念にチェックします。

3.データ入力

>>> 一方で、受注表のほうは書き込まれた採寸情報・体型補正情報・デザイン情報をCAD(Computer Aided Design:コンピュータによる設計)処理によりデザインごとにデータ化します。

4.データ出力(自動裁断)

>>> 入力した情報はCAM(Computer Aided Manufacturing:コンピュータ支援製造、縫製工場の場合は自動裁断機)によって1着1着お客様のサイズで生地を自動裁断します。

5.縫製開始

>>> 裁断はパーツ毎に個別に自動裁断され、カットされたパーツはそれぞれの製造現場へと流れていきます。
こちらの説明は別の機会に改めてご紹介します。

縫製の初期段階はこのような流れなのですが、
その中で今回はにスポットライトを当てて皆さんにご紹介します。

その前に、ここで読者の皆さんに簡単なご質問です。
皆さんが注文されるイージーオーダーのスーツではどんな所までが個別対応が出来るのでしょうか?

答えは、次の通りです。
    ① 生地や裏地のチョイス
    ② デザインのチョイス
    ③ 個別対応のサイジング
    ④ 個別対応の体型補正


この中で①②は当たり前のことですから割愛し、③④を説明すると次のようになります。

③サイジングの個別対応

>>> サイジングの個別対応というのは、お客様がお選びになられたデザイン(パターン)の中からお客様のサイズに最適なサイジングを導き出していくことを言います。

人には色んな体型の方がいらっしゃいます。
胸板が厚く、既製服だと1サイズ大きいのしか買えず着丈が長くなってしまう人。
肩幅の割に痩せていて、お腹周りがガバガバになってしまう人。

既製服の場合は、自分にあったサイズの製品を探すしかありませんが、オーダースーツの場合は気に入ったデザイン(パターン)の物を自分サイズで仕立てることが出来るのがサイジングの個別対応の醍醐味です。

④体型補正の個別対応

>>> オーダースーツの優れたところの1つにお客様の体型にあった補正が可能であることも挙げられます。
例えば、なで肩・怒り肩の人、身体が反り身の人、猫背の人etc

体型補正は、着心地に大きく影響しますし製品として出来上がった後からは修正が出来ないことが多く、それが出来るイージーオーダーは既製品と比べて凄いアドバンテージになります。
※:蛇足ですがオーダースーツにはパターンオーダー、イージーオーダー、フルオーダーとありますが、この中でパターンオーダーは既製品に近い概念のため体型補正を十分付けることが出来ません。反面、その分納期が早いメリットがあります。

以上がオーダースーツならではの個別対応を要する大変な作業なのですが、
それではこれらの個別情報を実際どのように工場の作業として行っているのでしょうか?

それを動画でご紹介しましょう。

< CAD >

 スーツの設計を行うCADシステム。
システムその物はマスターパターンがコンピュータの中に入っていて、お客様のサイズを入力することでこれを最適化していきます。

入力方法は...というとこんな感じ。先程掲載した受注伝票の中からサイズ情報、デザイン情報、体型補正の情報の全てを入力します。


簡単に入力していますが、もちろん後で誤入力がないかチェックもしています。(^^;)


続いて、、、
個人のデーターが入るとコンピュータが自動的に各パーツのサイズを決めます。
これをCAD上で実際の生地に当てはめて裁断出来るよう場所決め作業をします。

ちょっと見づらいですが、凄い勢いでパーツパーツを上から下に当て込んでいるのが分かります。
(イメージとして上が仮想のパーツ置き場。下が実際の生地の上に当てはめている状況です。)


どうでしょうか?手慣れているとはいえ凄い早さですね。
だいたいお一人様の入力で1分かからない位でしょうか?

アッという間ですが、これでCADはお終いで、次はCAM(自動裁断)に移ります。

< CAM >

 CADでデータ化された採寸情報はCAMで生地の裁断がなされます。

どんな機械化というと、、、画像のような幅1.2m長さ5.0m位の巨大な裁断台で行われます。

この中では1着1着生地を台の上に置き、変なシワが付いていないか確認し、薄いビニールをかけその上からバキュームで無駄な隙間が出ないようピタピタにします。

その状態で、個別のお客様の情報を呼び出し、ボタン1つで裁断が開始されます。


レーザーで焼き切りながらカットするためちょっと焦げ臭いような匂いもしますが、極めて正確に裁断します。

こうして、襟や袖、背中、見頃、ポケットのフタetc小さなパーツ一つに至るまで裁断され、これらは分割されて、それぞれの縫製パートへ分けられ縫製されます。

ただし、素晴らしいCAMシステムですが、時に機械では対応できないような時もあります。

それは、、、格子柄のご注文や生地に傷があった場合など。
読者の方はあまり意識されないかも知れませんが、格子柄などは出来るだけ柄をきれいに合わせてお仕立てした方が綺麗ですので、機械の自動裁断には任せられません。

こういった物は面倒ですが、1着1着型紙を当て手裁断します。


ご覧になっていかがでしたでしょうか?
縫製工場のCAD/CAMシステム。
実際に縫う現場とは少々違いますが、これが出来ることでこれまで全て手作業で行っていたオーダーの個別縫製作業が良い部分で機械化・近代化され、結果コストが劇的に下がっているのです。

既製服ですとそれこそSMLのサイズ展開ですし、体型補正もデザイン指定も裏地や付属品の個別性もありませんからもっと合理的に作業が進みますが、オーダースーツでもこれだけ合理化出来ることでビッグヴィジョンの価格の強みでもあるんです。

おまけ

 本編から少々離れますが、ビッグヴィジョンではお手頃価格の商品は中国の縫製工場にて縫製しております。

さて、この場合どうしているでしょうか?

それは・・・

CADシステムは日本国内に置き、CAMシステムだけ現地に設置するのです。
これにより、日本でのデザインと全く同じデザインが中国縫製でも可能になるからです。
縫製の技術力には日中では技術力に少なからず差がありますが、スーツとしての設計図は全く同じ物を使用しているのはこのような流れで行っているからなのです。

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